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認知症

「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の
違いとは?

年齢を重ねると「最近物忘れが増えたな」と感じることがしばしばあります。これは脳の老化が原因であり、誰にでも起こりうる自然な現象です。しかし、認知症が原因の物忘れは、加齢による物忘れとは性質が大きく異なります。

この記事では、加齢による物忘れと認知症による物忘れの違いや見分け方について解説します。

「加齢による物忘れ」と「認知症による物忘れ」の違い

記憶力は、20代をピークに加齢と共に減退していきます。60歳頃になると記憶力の低下に加えて判断力や適応力の衰えもみられるようになり、物忘れが次第に多くなってきます。「もしかして認知症?」と不安に感じるかもしれませんが、加齢による物忘れは自然な現象であり、認知症とは根本的に性質に違いがあります。

加齢による物忘れと認知症による物忘れを比較すると、以下のような違いがあります。[注1]

[注1]厚生労働省「認知症ケア法−認知症の理解」

誰にでも起こりうる「加齢による物忘れ」の症状

加齢による物忘れには、以下のような例があります。物忘れがたびたび起こるとアルツハイマー等を疑って受診する人がいますが、このような場合は認知症の症状ではありません。

・眼鏡をどこに置いたか忘れてしまう
・お昼に何を食べたか思い出せない

記憶には、@情報を覚える「記銘」、A情報を記憶として留める「保持」、そしてB情報を必要に応じて思い出す「想起(再生)」の三段階があります。加齢による物忘れはBの想起(再生)の機能が低下するため、覚えたことを思い出すまでに時間がかかります。

しかし、「眼鏡を置いたこと」や「食事をしたこと」は覚えており、自分が忘れているという事実に対しては自覚があります。このように、体験の一部のみを忘れるのが加齢による物忘れです。

そのため、加齢による物忘れの場合は、「最近物忘れが増えたな」と感じることはあっても日常生活に支障はなく、認知症のように症状が進行したり記憶以外の障害がみられたりすることもありません。

覚えておきたい「認知症による物忘れ」の症状

認知症が原因の物忘れは、自分が体験したことを丸ごと忘れてしまうのが特徴です。

・友達と会う約束をしたこと自体を忘れてしまう
・食事をしたこと自体を忘れ、食べた直後に食事を催促する
・なじみのスーパーへ買い物に出かけたものの、道が分からなくなり家に帰れなくなった
・使い慣れている電化製品の使い方が分からなくなった
・年月日や場所、人が分からなくなる
・物事を計画立てて行動することができなくなり、時間がかかる

認知症が原因の場合、記憶の初期段階である@の記銘ができなくなります。そのため「約束したこと自体を覚えていない」「食事したことを忘れる」といったように、体験したこと自体を覚えていません。よって認知症による物忘れでは、何度も同じことを尋ねるといった現象が起こります。本人はそもそも体験した記憶がないので、周りが「さっき食事したよ」と伝えても「今日はまだ何も食べていない」と怒り出すこともあります。そのため、ケアには注意が必要です。

本人が「最近物忘れが多いから、受診するべきかもしれない」と感じるケースでは、多くの場合加齢による物忘れが原因と考えられます。しかし、そもそも本人が、物忘れが多いと感じていない、物忘れ以外にも日常生活に支障をきたす障害がみられるといったケースでは、認知症の恐れがあります。認知症は、早期発見・早期治療が大切です。おかしいな、と感じたら早めに専門医を受診しましょう。

認知症のタイプ別の原因・症状に関して、詳しくは「知っておきたいタイプ別認知症とそれぞれの原因・症状」をご覧ください。

物忘れの対処法は?

加齢あるいは認知症による物忘れを改善・予防したい場合は、日常生活で以下のような対処法を実践してみましょう。

物忘れを補う工夫をする

日常生活にちょっとした工夫を採り入れると、物忘れを補うことができます。たとえば、簡単に覚えた記憶は忘れやすいので、繰り返し書く、何度も口に出してみる、目を閉じて映像化するなどです。
関連する事柄や印象、感情と合わせてイメージ化する、複数のことを関連付けてまとめてグループ化するなども有効な手段のひとつです。

また、物忘れした場合に備え、大切なことはメモをとる習慣をつけましょう。メモ帳やスケジュール帳などを持ち歩き、大切なことや気になることがあったらすぐにメモを取る習慣をつければ、物忘れしてしまった場合もすぐに内容を振り返ることができます。

日常生活を送る上で目に付きやすいところ(洗面台やキッチン、テレビの脇など)にメモ書きした付箋を貼り付けておくのもおすすめです。

認知症による物忘れは本人にとっては「経験していないこと」と認識する

認知症による物忘れは、本人にとっては「経験していないこと」と同義です。そのため、物忘れしたことに対して「さっきやったでしょう」などと指摘すると、本人を混乱させてしまうおそれがあります。

ときには何度も同じことを問答しなければならず、受け答えする側には少なからず負担がかかってしまいます。しかし過度な否定や感情的な対応は当人を萎縮させる原因になりますので、言動には十分注意しましょう。

相手が物忘れしているときの有効な対処法としては、その出来事から意図的に気をそらせるのがポイントです。
たとえば、朝食後に「朝ご飯はまだ?」と尋ねられたら、「あと少ししたらご飯にするから、それまでテレビでも見て待っていてね」などと声をかけ、他のことに意識を向けると、「朝食」へのこだわりを和らげることができます。

まとめ

同じ物忘れでも、加齢によるものと認知症によるものとでは、症状が大きく異なります。加齢による物忘れは老化現象の一種ですので、特別な治療は必要ありませんが、認知症は早期発見・早期治療を行うことが大切です。

そのため、普段から物忘れの様子をチェックして、加齢によるものか、認知症によるものなのかしっかり見極めましょう。

なお、物忘れはメモや付箋を活用したり、繰り返し書く・繰り返し言うなどの行動を習慣付けることによって、ある程度カバーすることが可能です。
また、身近に物忘れの症状が出ている人がいる場合は、物忘れの特性を理解した上で、過度に否定したり感情的になったりせず、穏やかに対応することを心がけましょう。

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