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認知症

アルツハイマー型認知症の初期症状とは?
原因と治療法について解説

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多い疾患です。発症後は時間の経過とともに症状が進行するため、できるだけ早い段階で治療することが症状を抑えるカギとなります。アルツハイマー型認知症のサインを見逃さないためにも、初期症状や受診のサインを知っておきましょう。

この記事ではアルツハイマー型認知症の初期症状と、その治療法について解説します。

アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症は、何らかの原因で脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊して、脳が萎縮することで発症します。発症後は時間の経過と共に脳の萎縮が進み、それに伴い症状も徐々に進行します。

アルツハイマー型認知症の初期症状は、多くの場合物忘れで自覚します。しかしながら、「年のせいかな?」「疲れているのかな?」と自分を納得させて、受診を躊躇するケースは少なくありません。また日や相手によって症状の出現に波があるため、家族も「なんとなくいつもと違うな…」と違和感を抱きつつ受診を先送りする場合があります。その結果、認知症の症状がそのまま進行すると、記憶は近い時期から徐々になくなっていきます。そして徘徊、失禁、性格の変化などが現われ、最終的には日常生活全般において介護が必要な状態となります。

アルツハイマー型認知症の原因を知っておこう

アルツハイマー型認知症は現代医学でも全容を解明できておらず、その原因も諸説あります。
ここでは一般論として、アルツハイマー型認知症の原因と考えられている要素を6つご紹介します。

年齢

アルツハイマー型認知症に罹患している人は、年齢を重ねるごとに多くなるといわれています。
実際、日本でも65歳以上の認知症の人の数は2020年時点で約600万人と推計されており、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されています。[注1]
一方で、65歳未満で認知症を発症する人もいることから、加齢による老化現象が原因であるとひとくくりにできないのが実状です。

[注1]厚生労働省 知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス総合サイト「認知症」

喫煙

かつてたばこに含まれるニコチンには、アルツハイマー型認知症の発症を減少させるという説がありました。
しかし、近年の研究により、喫煙はアルツハイマー型認知症の危険因子になり得るという説が有力視されています。[注2]
その理由として、喫煙による酸化ストレスの発生が動脈硬化症のリスクを高め、血管性の病変や神経変性の進行に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

[注2]国立長寿医療研究センター「環境:教育歴と認知症:アミロイド/タウイメージングからの視点」

教育

ある研究にて、学校教育を受けた年数が短いほど、アルツハイマー型認知症のリスクが増大するという結果が報告されています。[注2]
双方の因果関係は今のところ不明ですが、一説では学校教育を長く受けることによってニューロン間の接続が増加し、脳に変化が起こっても対応しやすくなるといわれています。

頭部外傷

頭部に繰り返し外傷を負ったり、負傷した際に意識を失ったりすると、アルツハイマー型認知症を発症するリスクが上がると考えられています。[注3]

[注3]厚生労働省「認知症ケア法−認知症の理解」

アルコールの過剰摂取

アルコールを過剰に摂取するとビタミンB1が欠乏しますが、ビタミンB1(チアミン)の不足によって起こるウェルニッケ脳症とその後遺症であるコルサコフ症候群のことを「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」と言います。

ウェルニッケ脳症はビタミンB1(チアミン)の不足により、脳の奥のほうの部位(脳幹部)に微小な出血が起こり、細かい眼の振るえ(眼振)が目の動きに制限が出る(眼球運動障害)、意識障害などの精神状態の変化、ふらつき(失調性歩行)といった様々な症状が急激に出現します。

ウェルニッケ脳症の原因としてはアルコール依存症が半分を占めますが、悪性腫瘍、消化管手術後、重症のつわり等のチアミン不足を生じるすべての病気でウェルニッケ脳症が起こる可能性があります。[注4]

すると、脳内で急速に神経細胞障害が生じ、慢性期には認知症になりやすい傾向にあります。[注5]

[注4]e-ヘルスネット「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」
[注5]e-ヘルスネット「認知症」

早期発見することの大切さ

アルツハイマー型認知症の根本的な治療方法は確立されていないため、治療内容は症状の進行を抑える対症療法となります。認知症の兆候にいち早く気づき初期の段階で治療を開始すれば、症状が軽いうちに進行が緩やかになります。

認知症の初期症状として最も多いのは、記憶障害です。しかし、高齢になると誰でも記憶力が衰えてくるため、認知症の兆候が見られても本人や家族が気づけないケースは少なくありません。そして「何かおかしい」と気づいた時にはすでに認知症が進行しており、周りのサポートなしでは生活できない場合もあります。本人がより長く自分らしく自立して生活するため、そして介護の開始をなるべく遅らせるためにも、認知症は早期発見することが大切です。

初期に見られる症状

以下は、初期に見られる症状の代表例です。ただし、症状の現れ方や程度は人によってそれぞれ異なります。

・最近の出来事が覚えられない
・同じことを何度も尋ねる
・適切な言葉がとっさに出てこない
・物や親しい人の名前を思い出せない
・日付が不確かになる
・身だしなみに無頓着になる
・大切なものをなくす、置き忘れる
・調理の手順が分からなくなる、時間がかかる
・性格が変化する(穏やかだった人が怒りっぽくなる、以前は活動的だったのに覇気がなくなるなど)
・慣れた道に迷う、どこへ行こうとしていたのか分からなくなる

アルツハイマー型認知症の治療法

アルツハイマー型認知症を完治させる治療法は、現時点では確立されていません。しかし、適切な治療を行うことで、認知症の悪化を食い止めることができます。
ここではアルツハイマー型認知症の主な治療方法や初期症状以降の経過、予防法について解説します。

治療方法

初期症状を含めてアルツハイマー型認知症と診断された場合の治療法は、大きく分けて「薬物療法」と「非薬物療法」の2つに分類されます。
薬物療法では、認知機能を改善する薬物や、行動・心理症状を抑える薬物を投与し、症状の緩和を目指します。

一方の非薬物療法では、認知機能のリハビリや生活リハビリとして、音楽を聴く、昔のことを回想する、園芸を楽しむなどの取り組みが推奨されます。また、患者の健康状態はアルツハイマー型認知症に少なからず影響を与えるため、健康管理も治療のひとつに数えられます。

経過

アルツハイマー型認知症の進行速度には個人差があります。
適切な治療を受けることで、進行速度にも変化があらわれる場合もあるため、早期に治療を受けることが必要です。

予防方法

初期症状を含めて、アルツハイマー型認知症は、生活習慣病と密接な関係があると考えられています。そのため、生活習慣病のリスクを低減することが、間接的にアルツハイマー型認知症の予防につながります。

具体的には、食生活の改善、定期的な運動などを日常生活に取り入れれば、アルツハイマー型認知症の予防に役立ちます。[注6]
また、上記の治療法でご紹介した非薬物療法の一環として、日頃から脳トレを行ったり、音楽療法や作業療法を習慣化したりするのも有効です。

[注6]政府広報オンライン「もし、家族や自分が認知症になったら知っておきたい認知症のキホン」

受診のサインを逃さないようにしよう

最近なんとなく変だなと感じていても、「認知症と診断されたらどうしよう…」という不安から受診を躊躇してしまうのは誰にでもあることと思います。しかし、アルツハイマー型認知症は進行性の病気ですので、初期症状があればできるだけ早く受診することが肝心です。治療の目的は、残っている能力や機能を十分に引き出し、自立した生活を長く続けることです。本人ができることを自分で行うことは、自信にもつながります。

まずはかかりつけの医師にかかり、最近の気になる症状について相談しましょう。もしかかりつけの医師がいなければ、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談します。地域包括支援センターとは、高齢者の生活全般に関わる地域の総合相談窓口です。本人だけでなく、家族でも相談できます。地域包括支援センターの電話番号や場所が分からない場合は、役所に電話する、ホームページで確認するなどして調べましょう。

アルツハイマー型認知症の初期症状や受診のサインを知っておくと、いざ兆候が表れた際にすぐに気づき行動に移せます。「おかしいな?」と思ったらなるべく早く受診しましょう。そうすることで症状が軽いうちに認知症の進行を抑えられ、本人はより長い時間自立して生活できますし、家族への負担もその分少なくなります。

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