更年期に起こる症状とは?原因や治療法も併せて知っておこう
女性はライフステージに応じて性ホルモンの分泌が変動し、心身に変化が訪れます。そのひとつとして挙げられるのが更年期症状です。
この記事では、更年期症状と更年期障害の違い、更年期に起こる症状や治療法について解説します。

更年期症状の基礎知識
更年期症状は女性のライフステージの一段階である更年期に現れます。
更年期症状のなかでも重いものが更年期障害として扱われます。
更年期とは
女性のライフステージは次の4つに大きく分かれます。[注1]
思春期 | 初経を迎える時期だが周期は不安定 |
性成熟期 | 性ホルモンの分泌が安定。妊娠・出産・育児、就業と多忙な時期 |
更年期 | 閉経をはさみ前後合わせて10年程度。性ホルモンの分泌が減少することで心身が徐々に変化 |
老年期 | 性ホルモン分泌低下の影響が長期化 |
日本人女性の場合、更年期の基準となる閉経の平均年齢は50歳となっており、前後5年間の45〜55歳がライフステージにおける更年期にあたるといえます。[注2]
閉経は卵巣の活動が徐々に落ち着き、月経が停止した状態を指し、閉経したと認められるのは、月経が12カ月以上来ない場合です。
[注1]公益社団法人日本理学療法士協会「女性のライフステージ」
[注2]内閣府「男女共同参画白書 平成30年版」
更年期症状と更年期障害
卵巣の活動が低下すると、エストロゲンの分泌が減少していきます。[注3]
“女性の場合は、閉経期前後の約10年間に卵巣ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少することによって症状が現れます。”
エストロゲンが減少することで、更年期症状・更年期障害として体調に変化が現れます。更年期症状と更年期障害の違いは次のとおりです。
・更年期症状:更年期に現れる症状のなかでも他の病気に伴わないもの
・更年期障害:更年期症状のなかでも症状が重く、日常生活に支障がでる状態
[注3]e-ヘルスネット「更年期障害」
更年期に起こる症状

更年期には、顔のほてりや発汗、腰や手足の冷えなどさまざまな症状が起こります。厚生労働省は「更年期症状・障害に関する意識調査」で、全国の20〜64歳の女性2,975人を対象に更年期症状の自己評価を実施。その結果、精密検査が望ましい層、長期間(半年以上)の計画的な治療が必要な層を合わせた割合は、40〜49歳で7.3%、50〜59歳で9.2%となっています。[注4]
50〜59歳の場合、程度に強弱はあれど、頭痛やめまいなど何かしらの更年期の自覚症状がある人は約2人に1人いることがわかります。
[注4]厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査(結果概要)」P10
主な更年期症状
主な更年期症状として挙げられるのが以下です。[注5]
・ほてり
・のぼせ
・発汗
・動悸
・頭痛
・関節痛
・冷え
・疲れやすさなどの身体症状及び気分の落ち込み
・意欲低下
・イライラ
・不眠などの精神症状
頭痛や関節痛といった身体的な症状に加えて、意欲低下、イライラなどの気持ちの面でも症状が出る可能性があります。
また、膀胱炎、尿失禁、目や喉などの粘膜の異常が症状として現れる場合もあります。
[注5]厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査(結果概要)」P1
更年期にさまざまな症状が出る理由
更年期に現れるさまざまな症状は、エストロゲンの分泌低下に起因します。閉経によって機能が低下する卵巣はエストロゲンの分泌を担っているため、更年期にはエストロゲンが少なくなってしまいます。
エストロゲンの分泌低下に加えて、更年期に現れる症状の原因とされているのが、家庭環境や仕事といった社会的要因、性格やストレスに代表される心理的要因です。
社会的要因、心理的要因は人それぞれであり、体質による違いもあることから、更年期による症状は個人差があると考えられています。
更年期についての相談で婦人科を受診する際は、気になる症状のほか、心配していること、不安に思っていることなどもリストアップして、具体的に話せるようにしておくとよいでしょう。
更年期に起こる症状の治療方法

更年期に起こる症状に対して用いられる治療法は、大きく次の4つがあります。
・薬物療法
・生活習慣の改善
・その他の療法
これらに加えて、適度な運動や睡眠といった生活習慣を整えることも更年期症状の対策として期待できます。
薬物療法
更年期に現れる症状の原因である、エストロゲンを補う治療法がホルモン補充療法(HRT)です。同療法は、ほてり、のぼせ、発汗が改善する効果が期待できます。
ホルモン補充療法(HRT)で用いるホルモン剤は、飲み薬、貼り薬、塗り薬などいくつかのタイプがあるため、それぞれの症状や状況にあった方法を選ぶことが大切です。
また、精神的な症状が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬、催眠鎮静薬といった向精神薬が用いられる場合もあります。
生活習慣の改善
更年期の症状を悪化させないためには、各種療法に加えて生活習慣を整えることも大切です。睡眠不足や運動不足は更年期の症状を悪化させる恐れがあるため、十分な睡眠と定期的な運動を心がけましょう。
また、規則正しい食生活も更年期症状の悪化を防ぐポイントとなります。たとえば、大豆に含まれているイソフラボンはエストロゲンに似た働きをするとされています。
エストロゲンは骨芽細胞を活発にする機能も担っているため、食事にイソフラボンを取り入れることで、骨粗鬆症の予防・改善も期待できます。[注6]
"大豆に含まれるイソフラボンは、エストロゲンに似た働きをしてエストロゲンの減少を補うため、骨粗鬆症の予防・改善に効果があると考えられています”
[注6]e-ヘルスネット「骨粗鬆症」
その他の療法
ホルモン補充療法(HRT)、漢方以外に療法として挙げられるのが、カウンセリングです。カウンセリングは心療内科や産婦人科で受けられます。また、カウンセリングではありませんが、同じ悩みを持つ人同士で話し合う更年期向けのピア支援も実施されています。[注7]
[注7] ヘルスケアラボ「更年期相談とピア支援」
まとめ
女性のライフステージの一段階である更年期は、ホルモンバランスの変化によってさまざまな症状が出ます。これを更年期症状と言います。
誰にでも出る可能性があるため、事前に更年期症状について把握しておくことが大切です。症状には個人差がありますが、生活に支障が出るほどの症状を感じたらすぐに医師に相談しましょう。