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子宮内膜症とはどんな病気?症状や治療法について解説

女性特有の疾患は複数ありますが、中でも若い女性を中心に罹患リスクが高いといわれているのが子宮内膜症です。

子宮内膜症は放っておくと強い痛みを感じたり、不妊の原因になったりする可能性がありますので、適切な方法で治療を受けることが大切です。

この記事では、子宮内膜症の概要と原因、主な症状、治療法について解説します。

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子宮内膜症とは

子宮内膜症とは、本来なら子宮の内側で発生・発育するはずの子宮内膜またはそれに類似する組織が、子宮の外で発育・増殖する病気です[注1]

子宮内膜症はさまざまな部位で発症しますが、特に以下のような部位にできやすいと言われています。[注2]

●卵巣
●ダグラス窩(子宮と直腸の間にあるくぼみ)
●仙骨子宮靭帯(子宮を後ろから支える靭帯)
●卵管
●膀胱子宮窩(子宮と膀胱の間にあるくぼみ)

ほとんどが子宮や卵巣の周辺ですが、まれに肺や心臓をおさめる胸腔、尿管、膀胱、腸管などにできることもあります。

子宮外にできた子宮内膜およびそれに類似する組織は、本来の子宮内膜と同じく、女性ホルモンの影響によって増殖と剥離を繰り返します。

子宮以外の場所は、子宮内膜の増殖や剥離に適した環境が整っていないため、月経時の出血が体外にスムーズに排出されなかったり、周囲の組織と癒着を起こしたりします。

放置するとさまざまな痛みや合併症を引き起こし、日常生活に支障を来す原因となります。

子宮内膜症は閉経前の女性なら、年齢に関係なく発症する病気ですが、特に20〜40代の女性に多い傾向にあります[注3]

なお、子宮内膜症は発症部位によって以下4つの種類に分類されます。

●腹膜病変
●卵巣子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)
●深部子宮内膜症(ダグラス窩・深在性子宮内膜症)
●他臓器子宮内膜症

[注1]ヘルスケアラボ「子宮内膜症」
[注2]日本子宮内膜症協会「子宮内膜症とは?2.子宮内膜症ってどんな病気」

腹膜病変

腹膜病変は腹膜子宮内膜症とも呼ばれており、数ミリ規模の病変が腹膜や臓器の表面に発生します。
活動性のある病変は痛みをともなう一方、白っぽく繊維化した古い病変はあまり痛みを生じないと言われています。
腹膜病変は開腹手術を行わないと正確に診断できません。

卵巣チョコレート嚢胞

卵巣チョコレート嚢胞は、卵巣の内部に発生する子宮内膜症のことです。
病巣に発生する袋の中に血液が溜まり、卵巣全体が10センチほどの大きさになることもあります。
一方で、小さい病変が破裂して激痛を起こすこともあります。
超音波エコーを使えばほぼ診断できますが、卵巣はさまざまな原因で大きくなることがあるため、他の卵巣嚢腫と間違われる場合もあります。

深部子宮内膜症

深部子宮内膜症は、腹膜の表面からやや埋もれた状態で発生する子宮内膜症です。
子宮と直腸が癒着したダグラス窩の奥に発生するケースが多く、強い性交痛や排便痛をともなうことがあります。
現時点で最も発見しづらく、かつ手術もしにくい病変とされています。

他臓器子宮内膜症

他臓器子宮内膜症は、肺や膀胱、尿管、腸管など全身のどこにでも発生しうる病変です。
特に肺内部に発生すると月経の時に吐血することもあります。
場所によっては手術で除去しきれないこともあるようです。

[注3]働く女性の健康応援サイト「月経について」

子宮内膜症を引き起こす原因は?

子宮内膜症の原因については、現代医学でもまだ全容が解明されていませんが、最も有力な説は、月経時の出血が逆流する「月経逆流説」です。

月経時の出血の大半は、膣を通じて体外に排出されますが、一部は卵管を通って骨盤の内部に逆流していきます。

月経時の出血には、子宮内組織や細胞が含まれていますが、これが血液と一緒に骨盤内に運ばれ、骨盤内の臓器や組織に付着すると、子宮内膜症になると言われています。

他にも、化生説、転移説、幹細胞説など複数の説が提唱されており、ひとつの説だけで子宮内膜症のすべてを説明することは不可能とされています。

なお、現時点では子宮内膜症は遺伝性の病気ではないという説が有力です。
ただし、子宮内膜症になりやすい体質そのものは遺伝する可能性があると指摘されています。

子宮内膜症が引き起こす主な症状について

子宮内膜症が引き起こす症状のイメージ

子宮内膜症にかかると、以下のような症状が現れます。

激しい月経痛

日本子宮内膜症協会の調べによると、子宮内膜症になった女性のおよそ9割が月経痛を訴えています[注4]

月経痛の程度には個人差がありますが、もともと月経痛があった方も、子宮内膜症に罹患したら痛みがひどくなったというケースもあるようです。

[注4]日本子宮内膜症協会「子宮内膜症とは? 3.子宮内膜症の症状」

月経時以外の下腹部痛

子宮内膜症になると、発生した周辺組織で癒着や剥離が発生するため、月経時以外でも下腹部に痛みを感じるようになります。

月経時以外の下腹部痛を感じる子宮内膜症の患者は全体の約7割を占めており、月経痛に次いで多い数値となっています。[注4]

腰痛

子宮内膜症ができた部位によっては、炎症や癒着から来る痛みが腰に及ぶこともあります。
一般的な筋肉疲労による腰痛とは異なり、子宮内膜症を原因とする腰痛は時間が経過しても症状が緩和しないのが特徴です。

また、炎症や癒着から来る痛みは安静時にも発生するため、横になっているのに腰痛が治まらないという場合は子宮内膜症の可能性があります

子宮内膜症で腰痛を発症する人は6割に及んでいます。[注4]

排便時の痛み

子宮内膜症が直腸付近に発生すると、癒着の影響で排便時に肛門の奥が痛むことがあります。
子宮内膜症で排便痛を訴える人は6割ほどいるようです。[注4]

性交痛

子宮や卵巣、腸、膀胱などに癒着が発生すると、性交中、あるいは性交後に痛みを感じることがあります。
統計では子宮内膜症で性交痛を感じた人の割合は5割近くに及んでいます。[注4]

月経時の出血量が多い、月経が長い

子宮や卵巣に起こる炎症や癒着が強くなると、子宮が収縮しにくくなります。
その結果、月経時の出血量が多くなったり、月経の期間が長くなったりする場合があります。

不妊

子宮内膜症による癒着で卵管が閉塞している場合や、チョコレート嚢胞がある場合は、妊娠率に影響を及ぼすおそれがあります。
特にチョコレート嚢胞に関しては、嚢胞が大きくなるほど不妊のリスクが高くなると言われています。

統計では、子宮内膜症による不妊は約4割に及んでいます。[注4]

子宮内膜症の治療法

子宮内膜症の治療のイメージ

子宮内膜症の治療法は、大きく分けて薬物療法と手術療法の2つがあります。

どちらの治療法を選ぶかは、症状の進行度や患者の希望などによって異なります。具体的な治療法をチェックしておきましょう。

薬物療法

薬物療法は一般的に、卵巣チョコレート嚢胞がないか、あるいは直径4cm以下の場合で、不妊の症状がない場合に行われます

痛みを抑えるための対処療法では、非ステロイド性抗炎症薬や漢方薬などが用いられます。[注4]

子宮内膜症による月経痛に有効ですが、病気そのものの進行を防ぐ作用はないため、症状が進行した場合はホルモン療法に切り替えるのが望ましいとされています。

ホルモン療法のGnRHアナログは、閉経に似た状態にするため、治療の効果が期待できますが、骨密度の低下や更年期症状が現れるなどのリスクがあります。[注4]
ただ、ホルモン療法中は排卵も月経も起こらないため、子宮内膜症の症状の進行を食い止めることが可能となります。

そのため、ホルモン療法ではGnRHアナログの投与量を減らし、更年期症状を抑えながら子宮内膜症の症状をコントロールしていくGnRHアナログ漸減療法などが行われることもあります。

他のホルモン療法としては、ピルを使用する方法もあります。
低用量ピルの痛みに関しては、GnRHアナログと同等の効果を期待できます。

なお、超低用量ピル(LP)は子宮内膜症の治療薬として健康保険が適用されるため、治療の負担を軽減できます。[注4]

手術療法

薬物療法で子宮内膜症がコントロールできなくなった場合や、チョコレート嚢胞などの病変がある場合は、手術療法を検討します

特にチョコレート嚢胞は40歳以降に卵巣がん化することがあるため、嚢胞が4cm以上のものは手術を勧められるケースが多いようです。[注4]

手術は卵巣を残す保存療法と、子宮卵巣を摘出する根治手術の2種類があります。

前者の場合、腹腔鏡や開腹で病巣のみを切除または焼いて処置します。

卵巣を残すので術後も妊娠することが可能ですが、再発の可能性があるため、薬物療法を続けることも検討しなければなりません。

一方、根治手術では子宮卵巣を摘出するため、術後は閉経状態になります。

再発の心配はなくなりますが、更年期症状や脂質異常症、骨粗しょう症といったリスクが高くなるため、それぞれの予防・対策が必要になります。

まとめ

子宮内膜症は、本来なら子宮内に発生・発育するはずの子宮内膜や類似した組織が、子宮以外の場所に発生してしまう病気です。

子宮内膜が子宮以外の場所で炎症や癒着を引き起こすと、ひどい月経痛や下腹部痛、腰痛、性交痛などを引き起こすほか、月経過多や不妊などの原因になることもあります。

「単なる月経痛だから」と症状を放置していると、症状が進行して不妊のリスクが高まる可能性がありますので、気になる症状が見られる場合は早めに医療機関を受診しましょう。

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