日本人の平均寿命は何歳?これまでの推移や海外とも比較してみよう!
日本人の平均寿命は諸外国に比べて長く、世界屈指の長寿国として知られています。 厚生労働省が定期的に平均寿命の統計をとっていますが、現時点で日本人の平均寿命はどのくらいなのでしょうか?
この記事では、平均寿命の定義や、日本人の平均寿命の推移、海外との比較、平均寿命と合わせて知っておきたい健康寿命の概要について解説します。
そもそも平均寿命とは?
平均寿命とは、0歳における平均余命のことです。[注1]
つまり、生まれたばかりの0歳の子どもが生存するであろう平均年数のことを指します。
平均寿命は、ある集団の死亡状況が今後変化しないと仮定して、各年齢の人があと平均何年生きられるかを計算した「生命表」をもとに計算されます。[注2]
厚生労働省では毎年日本人の平均寿命を発表していますが、その年に亡くなった人の年齢を平均したものではないことに注意が必要です。
なお、厚生労働省が公表している「令和2年簡易生命表」によると、日本人男性の平均寿命は81.64歳、日本人女性の平均寿命は87.74歳です。[注3]
[注1]e-ヘルスネット「平均寿命と健康寿命」佐藤 敏彦
[注2]厚生労働省「生命表について」
[注3]厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」
平均寿命はどのように推移してきた?
厚生労働省が「令和2年版 厚生労働白書」で掲載しているデータによると、日本人の平均寿命は1955年以降、右肩上がりに延び続けています。[注4]
1955年時点では男性63.60歳、女性67.75歳といずれも平均寿命は60歳台でしたが、前述の通り、2020年(令和2年)の平均寿命は男女ともに80歳を超えており、65年間で17〜20年間ほど平気寿命が延びたことになります。
なお、厚生労働省では2040年の平均寿命を男性で83.27歳、女性で89.63歳と推計しており、今後も日本人の平均寿命は延びていくと予測しています。
[注4]厚生労働省「令和2年版 厚生労働白書−令和時代の社会保障と働き方を考える− 平均寿命の推移 」
平均寿命が延びてきた理由
日本人の平均寿命が延び続けている理由は、大きく分けて3つあります。
2022年までの歴史を踏まえて紹介します。
1. 医学医術の進歩
医学医術は日進月歩で進化しており、時代を経るごとに効果的な医療技術や医薬品、医療機器が次々に誕生しています。
なかでも戦後は抗生物質の開発使用により、手術後の感染リスクが減少したことから、外科手術が目覚ましい進歩を遂げました。
抗生物質は内科的療法においても、結核や肺炎、胃腸炎といった感染症や、がんの治療に役立てられています。[注5]
また、現代は疾患の早期発見・早期治療を目指すための医療技術が進歩していることも平均寿命の延伸に影響をもたらしています。
[注5]厚生労働省「厚生白書(昭和53年版)」p2
2. 乳児死亡率の減少
前述のとおり平均寿命とは「0歳における平均余命」のことなので、日本人の平均寿命の延伸には、乳児死亡率の減少が大きく関わっています。
背景として、小児医学の疾病に対する診断・治療の進歩や、妊産婦に対する保健指導および健康診査といった母子保健対策の推進が挙げられます。[注6]
妊娠・出産について正しい知識を広め、かつ適切な健康診査を行うことが、乳児死亡率と周産期死亡率*の低下につながっています。
*周産期死亡―妊娠満 22週(154日)以後の死産と,生後 1週未満の早期新生児死亡(→新生児死亡)を合わせたもの
[注6]厚生労働省「厚生白書(昭和53年版)」p12
3. 生活環境の整備
水道や廃棄物処理施設といった生活環境施設が整備されたことにより、水を介した感染症の発生率が減少したのも平均寿命が延びた理由のひとつです。[注7]
日本の水道の衛生レベルは世界的に見ても高く、安全かつ良質な水道を日常的に使用できる環境の整備が日本人の長寿を支えています。
[注7]厚生労働省「厚生白書(昭和53年版)」p12
日本と海外で比べる平均寿命の長さ
日本は世界でも代表的な長寿国として知られていますが、諸外国と比べて平均寿命にどのくらいの差があるのでしょうか。
女性の平均寿命に関しては日本人が群を抜いており、次点である韓国の86.3歳、スイスの85.6歳より1歳以上も上回っています。
一方、男性についてはスイスの81.9歳に次いで長く、次点がシンガポール(81.5歳)となっています。
なお、主要10ヶ国のうち、最も平均寿命が短いのは男女ともにアメリカ合衆国で、男性は76.3歳、女性は81.4歳です[注8]。(人口は年央推計人口で、2019年の値である(パキスタンは2015年。イタリアは2018年。ロシアは2013年)。ただし、日本は令和2(2020)年10月1日現在日本人推計人口である。)
国や地域で平均寿命に差が生じる原因は複数ありますが、食習慣や喫煙習慣、生活環境などに起因していると考えられています。
[注8]厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」p4
平均寿命と合わせて知っておきたい「健康寿命」とは
ここまで平均寿命について説明してきましたが、ここからは昨今注目されている健康寿命について説明します。
健康寿命とは、ある健康状態で生活することが期待される平均期間を表す指標のことです。[注9]
健康寿命の算出方法は複数ありますが、日本では簡易生命表から5歳階級別の定常人口を、国民生活基礎調査から5歳階級別の「健康・不健康」の割合をそれぞれピックアップし、健康な人の定常人口を計算しています。
なお、令和元年における日本人の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳となっています。[注10]
[注9]厚生労働省「健康寿命のあり方に関する有識者研究会 報告書」p3
[注10]厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」p3
健康寿命の意義
平均寿命はあくまで「生存」に着目したものなので、たとえば病気に罹患して自分ひとりで生活できない状態であっても、平均寿命の算出に含まれます。
しかし、健康上に何らかの問題を抱えていると、満足な日常生活を送ることが難しくなるでしょう。
不健康な状態が長く続くと、自分の心身に大きな負担がかかるだけでなく、家族など身の回りの人の生活にも影響があります。
国民一人ひとりが自立した生活を送るためには、健康寿命を伸ばしていく必要があります。
ただ、令和2年の平均寿命が男性81.64歳、女性87.74歳であることを踏まえると、健康寿命との間には約9〜12年もの差があります。[注11]
その差は以前に比べると徐々に縮まってきているものの、ここ数年はほぼ横ばいとなっており、国では健康寿命を延伸する取り組みの実施を推奨しています。
[注11]厚生労働省「令和2年簡易生命表の概況」
健康寿命を延ばすための取り組み
健康寿命を延ばすために、日頃から取り組んでおきたいことを3つご紹介します。
1. 食生活を見直す
栄養バランスの悪い食習慣を続けていると、体調不良が起こりやすくなるだけでなく、がんや循環器疾患、糖尿病といった生活習慣病のリスクが高まる要因となります。
毎日の食事は主食・主菜・副菜をバランス良く整え、必要な三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)を補いつつ、ビタミンやミネラルもしっかり摂取するのが理想です。[注12]
なお、食塩の取りすぎは高血圧による循環器疾患や胃がんなどのリスク上昇につながりますので、男性は1日8g未満、女性は7g未満に抑えるようにしましょう。[注12]
野菜は1日350gを目安に摂取すると、必要なビタミンやミネラルを補給できます。[注12]
[注12]厚生労働省「健康手帳」p25
2. 適度な運動を行う
健やかな体を維持するためには、適度な運動習慣が必要不可欠です。
日頃から習慣的に体を動かしていれば、糖尿病や心臓病、脳卒中、がんといった重疾患のほか、足腰の痛みやうつ、認知症などのリスク減につながるといわれています。[注13]
国が定めた「健康づくりのための身体活動基準2013」では、1日の運動強度および運動量の目安が年代別に定められています。
18歳〜64歳までは歩行以上の強度の身体活動を毎日60分、65歳以上は運動強度を問わず、身体活動を毎日40分続けるのが理想です。
また、18歳〜64歳については、息が弾んで汗をかく程度の運動を毎週60分続けることも推奨されています。[注13]
日頃運動不足の人がいきなり激しい運動を行うと心身に大きな負担がかかりますので、まずは普通歩行や早歩きなど、無理のない範囲で体を動かすことから始めましょう。
[注13]厚生労働省「健康手帳」p29
3. 良質な睡眠を取る
健康的な生活を送るためには、十分な休養を取る必要があります。
ここでいう「十分な休養」とは、単純に長時間眠るということではなく、質の良い睡眠を取るという意味です。いくら長く眠っても、睡眠の質が悪いと十分な休息を取ることはできません。
良質な睡眠を取るためには、日中に適度な運動を行う、就寝時間の2〜3時間前に入浴する、寝る前に明るい光を浴びない、朝起きたら太陽の光を浴びるなどの工夫を採り入れるのが効果的です。[注14]
[注14]厚生労働省「健康手帳」p31
まとめ
日本が世界的な長寿の国であることは有名であり、その平均寿命は今もなお延び続けています。
ただ、平均寿命には「健康、不健康」の概念がないため、一人ひとりが健やかに、自立した生活を送るためには、「健康寿命」を延ばすことが大切です。
健康寿命は食習慣や運動習慣、良質な睡眠などによって伸ばすことが可能ですが、これらは日々の健康づくりにも役立つ行動ですので、積極的に取り組むことをおすすめします。