喘息ってどんな病気?治療法はあるの?
喘息は子どもの病気というイメージがある方も多いようですが、実際には大人になってから発症するケースもあります。
症状によっては日常生活に支障を来すこともありますので、自分や家族に喘息の症状が現れた場合に備え、基本的な知識をおさえておきましょう。
この記事では、喘息の概要や症状、原因、主な治療法とセルフケアについて解説します。

喘息とは?
喘息とは、気道に炎症が生じている状態のことです。[注1]
気道とはその名の通り呼気の通り道のことで、主に粘膜や粘膜下組織、平滑筋などからなる気管支を意味します。
四六時中、咳やたんなどの症状が出ているわけではありませんが、外部から刺激を受けると発作が起こり、つらい症状に悩まされることがあります。
[注1]厚生労働省「喘息の疾患としての特徴」P15
日本における喘息の患者数
日本における喘息患者の人数は、令和2年で約9.1万人とされています。[注2]
令和2年の日本の人口は約1億2,622万人ですので、喘息の有病率(医師による喘息の診断をされ、喘息症状がある・もしくは喘息の薬を使用している人の割合)はおよそ0.01%(およそ10,000人に1人)ということになります。[注3]
なお、年代別では0〜14歳が約3.8万人、35〜64歳が約2.5万人となっています。[注2]
成人になって初めて発症する成人発症喘息は成人喘息全体の70〜80%を占めるというデータもあるため[注4]、子どもだけではなく大人になってから喘息を発症するケースもあることを念頭に置いておきましょう。
[注2] 厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況 統計表1〜8」p25
[注3] 総務省統計局「令和2年国勢調査 人口速報集計結果 全国・都道府県・市町村別人口及び世帯数 結果の概要」p3
[注4]厚生労働省「成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育」
喘息の症状と原因について知っておこう

喘息になるとどのような症状が現れるのか、なぜ喘息に罹患するのか、それぞれ詳しく解説します。
喘息の主な症状
喘息の発作が起こると、以下のような症状が現れます。

激しい咳
息をつく間もないほどの激しい咳が続き、症状がひどい場合、呼吸困難をともなうこともあります。
咳は就寝中の夜間や早朝に出ることが多く、逆に昼間は発作が起こりにくい傾向にあります。また、時間帯だけでなく季節によっても発作の頻度に違いが出ます。
特に朝晩の寒暖差が大きい春先や秋口といった季節の変わり目は、喘息の発作が起こりやすいといわれています。
たん
咳とともに、無色で粘り気のあるたんが出始めます。
粘り気の強いたんは喉の奥に絡まりやすく、不快な状態が続く可能性があります。
喘鳴(ぜんめい)
喘鳴とは、呼吸をするたびに喉からゼーゼー、ヒューヒューという音が鳴る状態のことです。
炎症によって気道が狭くなっているときに起こる症状で、喘息の場合は息を吐くときに音が鳴るケースが多いようです。
気道が狭い=呼吸が苦しくなっている証拠ですので、酸素投与などで症状を落ち着かせる必要があります。
胸の苦しさ
喘息の発作が起こると、激しい咳が出るのに加えて、気道が狭くなっているため、胸苦しさを感じます。
息切れ、息苦しさ
気道に炎症が起こっている状態で身体を動かすと、短時間でも息切れや息苦しさを覚えることがあります。
以前まで何ともなかった行動で息切れ、息苦しさを感じるようになったら、喘息の発作が起きている可能性があります。
呼吸困難
激しい咳が続くと、うまく酸素を取り込めず、呼吸困難を起こすことがあります。
症状が落ち着かない場合は救急外来を受診し、然るべき処置を受ける必要があります。
なお、呼吸が減弱しているときや、血中の酸素濃度が低下して唇や指先が青白くなるチアノーゼがみられる場合は、直ちに救急車を呼びましょう。
喘息が起こる原因
喘息が起こる原因は、アレルギーによるアトピー型と、それ以外による非アトピー型の2種類に分類されます。
アレルギーによる喘息(アトピー型)
カビやダニの死骸、ペットの毛などのアレルゲンによって起こる喘息です。
何がアレルゲンとなるかは人によって異なりますが、少々の刺激でも激しい咳などの発作が起こることがあります。
特に現代日本の住宅は気密性が高いぶん、湿気がこもりやすい傾向にあるため、ハウスダストによるアトピー型の喘息が増えてきています。
ウイルス感染(非アトピー型)
風邪やインフルエンザといった呼吸器系の感染症は、しばしば気道に炎症を起こすため、喘息を悪化させる原因となります。
また、人によっては解熱鎮痛薬の一種であるアスピリンによって喘息を引き起こすこともあります。
喫煙(非アトピー型)
タバコの煙に含まれるニコチンなどの有害物質には、気道の炎症を悪化させる原因となることがあります。
自分が喫煙していなくても、他の人のタバコの煙を吸う受動喫煙でも、喘息に悪影響を及ぼすおそれがあるので要注意です。
肥満(非アトピー型)
肥満によって気道が狭くなると、喘息の症状が悪化する原因になると言われています。
また、脂肪細胞から分泌される物質が喘息の発作を誘発する原因になるという説もあります。
ストレス(非アトピー型)
慢性的にストレスを感じていると、自律神経が乱れ、気道を収縮させることがあります。
また、ストレスによって免疫力が低下すると、風邪などの感染症にかかりやすくなるため、間接的に喘息の原因になる場合もあります。
主な治療法とセルフケア

喘息は適切な治療を行わないと症状がどんどん悪化していきます。
喘息の重症度は、発作の頻度や強度などによって以下のように4つに区分されます。[注5]

中等症持続型や重症持続型になると、喘息症状の強度はしばしば悪化し、日常生活にもたらす影響がだんだん大きくなります。
そのため、軽症のうちから適切な治療を行い、症状の悪化を食い止めることが大切です。
[注5]厚生労働省「成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育」p76
喘息の治療法
喘息の治療法は、症状がなくても症状がない状態を維持するために毎日使用する「長期管理薬」と、発作が起きた際に抑制を目的として使用する「発作治療薬」の2種類を使い分けるのが基本です。
長期管理薬はコントローラーと呼ばれ、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬や、気道を広げる長時間作用性β2刺激薬などが用いられます。
一方、発作が起こった時に用いられる短時間作用性吸入β2刺激薬などの発作治療薬はリリーバーと呼ばれ、気道を広げて呼吸を楽にする作用があります。
なお、リリーバーはあくまで応急処置であり、気道の炎症そのものを抑える働きはないので、平時は長期管理薬による治療を続ける必要があります。
日常生活でできるセルフケア
喘息持ちの人は、日常生活のささいな刺激で発作を起こすことがあります。
医療機関で適切な治療を受けつつ、発作を引き起こすような要因をなるべく排除することを心がけましょう。
たとえばアトピー型なら、こまめに清掃をしてアレルゲンを除去する。喫煙や副流煙に気をつける。免疫力をアップして感染症を予防するなど。
また、肥満やストレスが原因になることもありますので、適度な運動を行うのもおすすめです。
ただし、激しい運動を行うと発作のリスクがあるので、かかりつけ医に相談し、実践してもよい運動の種類や頻度を確認しておきましょう。
まとめ
喘息の症状である咳やたんは風邪症状と似ているため、軽症のうちは放置されがちです。
しかし、喘息は放っておくと症状が悪化し、重症化すると日常生活に支障を来す原因となります。
医療機関で適切な治療を行うと共に、日常生活では喘息の原因となるハウスダストや喫煙、肥満などの問題を解決する工夫を採り入れ、きちんと自己管理しましょう。