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先天性疾患とは?原因や種類を理解し上手に子どもと向き合おう

妊娠している女性やその家族にとって、お腹の赤ちゃんが無事に産まれてくるかどうかは心配ごとのひとつです。もし赤ちゃんが先天性疾患を持っていた場合、ご家族は病気と向き合い、適切な対応を行わなければなりません。
そのためには、先天性疾患をよく理解し、基本的な知識を学んでおくことが大切です。

この記事では、先天性疾患の基礎知識や原因、主な種類、先天性疾患の検査方法について解説します。

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先天性疾患とは

先天性疾患とは、生まれつき体や臓器の機能に異常がある疾患のことです。
脳や心臓、消化管をはじめとするさまざまな臓器で異常が起こる可能性があり、その症状や度合いも人によってまちまちです。
そのため、胎児に先天性異常が認められた場合は、その種類や症状、度合いなどに応じた治療法や対応を選ぶ必要があります。

なお、日本における先天性疾患(先天奇形・先天異常)の発生率は、一般的な水準で3〜5%とされています。[注1]

[注1]環境省「第10章 健康管理 10.6 妊産婦に関する調査」

乳児死亡数の3割を占める先天性疾患

先天性疾患のある子どもは、適切な治療と対応によって社会に適応していくことも可能ですが、その一方で、乳児期に死亡してしまうケースも少なくありません。

厚生労働省が公開している「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、1歳未満の乳児死亡のうち、先天奇形、変形及び染色体異常が占める割合は男児が32.3%、女児が38.3%と、いずれも3割を超えています。[注2]

とくにエドワーズ症候群(18トリソミー)やパトウ症候群(13トリソミー)は、生後1ヶ月を迎える前に死亡する割合が非常に高いと言われています。

[注2]厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」P12

先天性疾患の種類は何がある?

先天性疾患は一つだけではなく、大きく分けると4つの種類があり、染色体によるもの、遺伝子によるもの、多因子によるもの、環境因子などによるものなどがあります。

・ダウン症候群
・エドワーズ症候群
・パトウ症候群
・先天性代謝異常
・先天性疾患

ダウン症候群、エドワーズ症候群、パトウ症候群は代表的な染色体疾患で、染色体疾患のうちの70%強を占めます。[注3]
このうち、最も割合の大きいダウン症候群は、特徴的な顔貌や知的障害などが現れる疾患ですが、他の染色体疾患に比べると寿命は長く、壮年まで生きる人も少なくありません。
症状に適した対応を行えば、社会の中で生活していくことが可能です。

一方、知的障害や重度の小頭症などを示すエドワーズ症候群や、顔面の奇形、小眼球症などが起こるパトウ症候群は生存率が極めて低く、1年以内に死亡するケースが大半を占めています。

また、先天性代謝異常とは、生まれつき食べ物に含まれる栄養素をうまく代謝できなかったり、ホルモンの分泌に異常が現れたりする疾患です。

先天性心疾患には、心房中隔欠損症や、心室中隔欠損症、動脈管開存症などがあります。

[注3]日本産婦人科学会「出生前診断」P5

先天性疾患を引き起こす原因

喫煙のイメージ

日本では3〜5%の乳児が先天性疾患になる可能性がありますが、その原因は何なのでしょうか?
先天性疾患を引き起こす原因は大きく分けて4つあります。

染色体によるもの(染色体異常) ・ダウン症候群(21トリソミー)
・エドワーズ症候群
・パトウ症候群 など
遺伝子によるもの ・家族性大腸ポリポーシス
・フェニルケトン尿症
・血友病 など
さまざまな因子によるもの(多因子遺伝) ・ヒルシュスプルング病
・先天性心疾患
・糖尿病
・高血圧 など
環境因子や催奇形因子によるもの ・タバコやアルコール、特定の薬剤、放射線物質による先天性疾患
・妊婦の風疹、トキソプラズマ感染による先天性疾患 など

染色体によるもの(染色体異常)

染色体によるものは染色体疾患と呼ばれ、先天性疾患全体のうち、約25%を占めると言われています[注3]

染色体の本数に変化が生じると、前項で説明したダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群、パトウ症候群などの先天性疾患を引き起こします。
なお、最も発生割合が高いのは全体の半数以上を占めるダウン症候群です。

受精卵の段階で染色体異常が発生し、出生前診断によって疾患がわかるケースもあります。

[注3]日本産婦人科学会「出生前診断」P3

遺伝子によるもの

遺伝子によるものは先天性疾患の原因のうち、およそ20%を占めています[注3]
精子と卵子が受精した際、遺伝子に何らかの変化を発生すると先天性疾患の原因となります。
代表的な例として、家族性大腸ポリポーシス、フェニルケトン尿症、血友病などが挙げられます。

[注3]日本産婦人科学会「出生前診断」P3

さまざまな因子によるもの(多因子遺伝)

先天性疾患の原因のうち、約40%を占めるのが多因子遺伝によるものです[注3]

多因子遺伝とは、複数の遺伝子の異常に加え、生後の環境要因によって引き起こされる疾患のことです。
代表的な例として、ヒルシュスプルング病や先天性心疾患のほか、糖尿病や高血圧といった生活習慣病も多因子遺伝のひとつに数えられます。

[注3]日本産婦人科学会「出生前診断」P3

環境因子や催奇形因子によるもの

先天性疾患の原因のうち、約5%を占めると言われているのが環境因子や催奇形因子によるものです。[注3]
環境因子および催奇形因子とは、母体を通して赤ちゃんに移行し、その影響で先天性疾患を引き起こす可能性のある物質や要因のことです。
たとえば、タバコやアルコール、特定の薬剤、放射線物質などがこれに該当します。
妊婦が風疹やトキソプラズマなどの感染症に罹患したことがきっかけで先天性疾患を引き起こすケースもあります。

[注3]日本産婦人科学会「出生前診断」P3

先天性疾患の検査方法

先天性疾患の検査をする夫婦のイメージ

先天性疾患についてより詳しく知りたいときや、我が子が先天性疾患かもしれないと不安になった場合に実施する検査方法について解説します。

医療機関を受診

先天性疾患について不安や悩みを抱えている人は、まずかかりつけ医に相談しましょう。
先天性疾患は症状や度合いに個人差があるため、どのような処置や治療を受ければいいのかはケースによって異なります。
医療機関を受診し、我が子にはどんな治療・対応が必要なのか相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

出生前検査を受けてみる

出生前検査とは、赤ちゃんが生まれる前に、どんな病気を持っているか検査し、その結果をもとに診断を行うことです。
出生前検査を実施すると、お腹の赤ちゃんがどのような先天性疾患を持っているか調べることができます。
ただ、出生前検査で判断できるものは先天性疾患のうちの一部でしかありません。確実に疾患の有無を確認できるわけではありませんので注意しましょう。

出生前検査の目的

出生前検査を実施する目的は、お腹の赤ちゃんの状況を正確に把握し、将来の予測を立て、妊婦およびそのパートナーの家族形成の在り方などに係わる意思決定を支援することです。[注4]

先天性疾患の種類によっては、生後すぐに治療を必要とするものもあります。
先天性疾患を持つ子を育てていくためには、適切な治療を受けるとともに、日常生活でもさまざまな支援が必要となります。
出生前に先天性疾患の有無がわかれば、今後どのように病気と向き合っていくか、どのような準備が必要となるのか、時間をかけて考えることができます。

あらかじめ先天性疾患の種類が判明していれば、事前に必要な治療の準備を整え、出産に臨むことができるでしょう。

[注4]厚生労働省「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」P3

出生前検査の内容

出生前検査は、大きく分けて以下のようなものがあります。[注4]

1. 細胞遺伝学的方法
2. 遺伝生化学的方法
3. 分子遺伝学的方法
4. 細胞・病理学的方法
5. 画像診断的方法

1〜4は羊水や絨毛、その他の胎児試料等を用いて検査を行います。
5は超音波検査などを用いて検査する方法
です。
これらの方法は、それだけでは診断を確定できない「非確定的検査」と、検査結果に基づいて診断を確定できる「確定的検査」の2つに分類されます。

まずは非確定的検査を実施し、その検査内容に基づいて確定的検査を実施するか否かを判断します。
非確定的検査には複数の種類がありますが、近年は感度が高く、かつ妊娠10週以降から実施できる「NIPT(新型出生前診断)」が主流となりつつあります。

NIPTは、日本医学界と日本産科婦人科学会が認定している「認定施設」と、認定を受けていない「認定外施設」の両方で受けることが可能です。

[注4]厚生労働省「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」P6

NIPTを受けられる人の要件

NIPTは誰でも受けられる検査ではなく、以下の要件に該当する人が対象となります。[注5]

・高年齢の妊婦
・母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性があるとされた妊婦
・染色体数的異常を有する子を妊娠したことのある妊婦
・両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有しており、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーになる可能性があるとされた妊婦
・胎児超音波検査で胎児が染色体数的異常を有する可能性があるとされた妊婦

以上のいずれかに該当し、かつ本人が意思決定することが、NIPTを受ける要件となります。

[注5]厚生労働省「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」

まとめ

先天性疾患は、赤ちゃんが生まれつき持つ疾患のことです。
原因は染色体によるものや遺伝子によるものなどさまざまですが、中にはタバコやアルコール、特定の薬剤などが原因となるケースもあります。
このようなケースは母親が気をつけて生活していれば予防が可能ですので、妊娠中は十分注意して生活することが大切です。

また、先天性疾患と一言にいっても、症状の内容や程度は赤ちゃんによってまちまちです。
近年は出生前検査の精度も高くなり、出産前に先天性疾患の有無や種類を調べることも可能となっています。
事前に先天性疾患の有無がわかっていれば、赤ちゃんを迎える環境を整える準備もしっかり行うことができます。
わからないことは医療機関に相談するなどして、先天性疾患に関する知識や理解を深め、きちんと向き合うことが大切です。

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