小児がんになりやすい子はどんな子?発生原因や治療法について理解しよう
日本人の国民病とも言われているがんは、成人だけが発症するわけではありません。子どもであってもがんになってしまうことがあります。
この記事では子どものがん、小児がんについて原因や症状、治療法について解説します。

小児がんとは?
小児がんとは、15歳未満の小児期に発生する悪性腫瘍の総称です。日本では年間2,000~2,500人の子どもが小児がんと診断されていて、これは10,000人に約1人の割合です。[注1]
子どもの死亡原因において小児がんが占める割合は大きく、5〜9歳の死亡原因では1位、1〜4歳の死亡原因では3位、10〜14歳では2位になっています。[注1]
[注1]国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんの患者数(がん統計)」
小児がんになりやすい子はどんな子?原因は何?

小児がんになりやすい子はどんな子で、原因として考えられるのは何なのでしょうか。
大人のがんの場合は生活習慣の乱れや肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスなどに感染したことが原因と考えられています。一方で、小児がんの原因は明らかになっていない点があります。そのため、小児がんになりやすい子がいるというわけではありません。ただし、眼のがんの原因となる網膜芽腫やウィルムス腫瘍と呼ばれる腎臓の悪性腫瘍は、遺伝するとも考えられています。[注2]
[注2]国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんの患者数(がん統計)」
小児がんの種類
小児がんは白血病に代表される血液がんと、脳腫瘍をはじめとした固形がんに分けられます。
小児がんの種類
小児がんの種類として、白血病、脳腫瘍などがあり、国立研究開発法人国立がん研究センターによれば、小児がんの種類とそれぞれの特徴は次のとおりです。[注3]
白血病 | 血液のがんです。小児がんの約4割を占めます。 |
脳腫瘍 | 頭蓋骨の内側にできたがんです。白血病に次いで多く、小児がんの約2割を占めます。子どもに多い脳腫瘍はグリオーマ(神経膠種)、胚細胞腫瘍、髄芽腫などです。 |
リンパ腫 | リンパ節、脾臓、骨髄などウイルスの排除などの免疫機能をつかさどるリンパ組織から発生するがんです。リンパ組織は全身に及んでいることから、全身のあらゆる部位に発生する可能性があります。 |
胚細胞腫瘍 | 精子や卵子になる前の未成熟な細胞から発生した腫瘍の総称です。縦隔(胸の奥)、後腹膜、仙尾部(お尻の骨)などの身体の真ん中に発生します。 |
神経芽腫 | 交感神経のもとになる細胞から発生する腫瘍です。腎臓の上にある副腎や交感神経節(背骨のわき)などから発生します。 |
上記のうち、白血病、リンパ腫は血液がん、脳腫瘍、胚細胞腫瘍、神経芽腫は固形がんにあたります。
また、小児がんのうち罹患率が高い順は次のとおりです。[注4]
白血病 | 38% |
脳腫瘍 | 16% |
リンパ腫 | 9% |
胚細胞腫瘍・性腺腫瘍 | 8% |
神経芽腫 | 7% |
38%と最多になっている白血病は、急性リンパ性白血病と急性骨髄性白血病と大きく2つに分けられ、内訳は約70%と約25%になっています。[注5]
[注3]国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんの患者数(がん統計)」
[注4]国立研究開発法人国立がん研究センター「小児・AYA世代のがん罹患」
[注5]国立研究開発法人国立がん研究センター「白血病〈小児〉について」
参考:成人で発生するがんの種類
成人で発生するがんの種類と原因は小児と異なります。まず、成人が罹患するがんのうち罹患率が高いがんは以下のとおりです(人口10万対)。[注6]
男性 | 女性 | |
---|---|---|
1位 | 73.2:大腸 (結腸・直腸) |
100.5:乳房 |
2位 | 68.2:前立腺 | 44.9:大腸 (結腸・直腸) |
3位 | 63.4:胃 | 34.3:子宮 |
4位 | 61.9:肺 | 26.1:肺 |
5位 | 19.0:肝 および肝内胆管 |
23.1:胃 |
小児がんと比較すると成人の場合、男女で違いがあるうえに、大腸や胃、肺、肝臓といったように、生活習慣が原因と考えられるがんの発生が多くなっています。特に男性は生活習慣が原因によるがんの発生リスクが高い傾向にあるといえます。[注7]
男性 | 女性 | |
---|---|---|
喫煙 | 23.6% | 4.0% |
受動喫煙 | 0.2% | 0.9% |
感染 | 18.1% | 14.7% |
飲酒 | 8.3% | 3.5% |
塩分摂取 | 3.0% | 1.6% |
過体重・肥満 | 1.0% | 0.3% |
運動不足 | 1.0% | 1.6% |
野菜摂取不足 | 0.3% | 0.1% |
果物摂取不足 | 0.1% | 0.0% |
ホルモン剤使用 | ー | 0.4% |
全体 | 43.4% | 25.3% |
[注6]厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告」 P18、19
[注7]国立研究開発法人国立がん研究センター「科学的根拠に基づくがん予防がんになるリスクを減らすために」
小児がんの症状

小児がんは発熱や頭痛、リンパ節の腫れといった風邪のような症状に加えて、筋肉や胸のしこりなどが現れるケースがあります。
子どもの年齢によっては症状を上手に親に伝えられない可能性もあるので、症状が長く続いている、悪化がみられる場合はすぐに医師を受診しましょう。
発熱
小児がんにおける発熱は、必ずしも高熱になるわけではなく、他の症状もともないます。発熱と解熱を繰り返すため、原因がわからない不明熱とされることもありますが、不明熱のうち10%未満は小児がんの症状とされているため、注意が必要です。[注8]
[注8]国立研究開発法人国立がん研究センター「小児がんについて」
頭痛
頭痛は小児がん以外の原因も考えられますが、嘔吐をともなう頭痛は脳腫瘍が疑われます。また、歩行時のふらつきや不機嫌、読み書きができなくなるといった症状をともなう場合もあります。[注9]
[注9]国立研究開発法人国立がん研究センター「脳腫瘍〈小児〉について」
リンパ節の腫れ
小児がんでは首のまわりや耳の後ろ、顎の下、足の付け根のリンパ節が腫れることがあります。リンパ節の腫れは痛みをともなわないため、子どもが自発的に症状を伝えるのは難しいかもしれません。また、リンパ節の腫れの原因が小児がんであるかを判断するには、手術で腫れているリンパ節を摘出してがん細胞があるかを確認する必要があります。
骨や関節の痛み
骨や関節の痛みは白血病や骨肉腫などが原因で起こりますが、神経芽腫が転移したことでも痛みが発生する可能性があります。
眠れなくなるほどの痛みに襲われることもあるため、症状が長く続くようであれば病院を受診しましょう。
筋肉のしこり
筋肉のしこりは手足に加えて鼻やのどといった顔、性器に現れ、痛みや発熱をともなう場合もあります。しこりが大きくなると座りづらくなったり歩きづらくなったりしてしまいます。
胸のしこり
白血病、リンパ腫、神経芽腫の場合、左右の肺の間にある縦隔にしこりが生じることがあります。しこりが生じたことで気管や心臓が圧迫されてしまい、息苦しさや咳、顔のむくみ、動悸、下半身の麻痺などにつながってしまいます。
お腹に大きなしこりがある
小児がんによるお腹のしこりは、1歳〜5歳に多くみられる症状です。しこりは大きくなると腸や尿路を圧迫してしまうので、腸のまわりに水がたまってしまう腹水などにつながりかねません。
瞳の状態
網膜芽細胞腫は白い腫瘍が瞳の中で大きくなることがあります。これによって瞳が白く光って見えてしまうのが、白色瞳孔という症状です。
小児がんの治療法
小児がんは手術治療、薬物療法、放射線治療、造血幹細胞移植などを組み合わせて治療します。小児がんは種類が多いため、実績の多い病院で治療を受けるのがよいでしょう。
治療が終わってからも体調に変化がないか、がんが再発していないかを検査するための通院が必要になってきます。
また、小児がんの治療によって、家族の生活が変化する点も注意しましょう。子どもの幼稚園や保育園、学校のこと、仕事のバランスなどで悩むケースも少なくないようです。
子どものがん治療は、子ども自身はもちろん、家族も思い詰めてしまいがちです。前向きに治療へ取り組んでいけるよう、積極的に周囲へ協力を求めましょう。
まとめ
小児がんは成人のがんと異なり、原因が判明していない点があります。そのため、小児がんになりやすい子がいるというわけではありません。小児がんは、発熱や頭痛といったように風邪のような症状や骨や関節の痛み、筋肉のしこりなどが現れることがあります。子どもは自分の症状をうまく伝えられない可能性があるので、日頃から子どもの様子や症状を確認しておくことが大切です。風邪のような症状が長引く、手足にしこりがあるといったように、小児がんと思われる症状があればすぐに医療機関での診療を受けましょう。