アルツハイマー型認知症の初期症状と受診のサイン

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多い疾患です。発症後は時間の経過とともに症状が進行するため、できるだけ早い段階で治療することが症状を抑えるカギとなります。アルツハイマー型認知症のサインを見逃さないためにも、初期症状や受診のサインを知っておきましょう。

目次

アルツハイマー型認知症とは?

アルツハイマー型認知症は、何らかの原因で脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊して、脳が萎縮することで発症します。発症後は時間の経過と共に脳の萎縮が進み、それに伴い症状も徐々に進行します。

アルツハイマー型認知症の初期症状は、多くの場合物忘れで自覚します。しかしながら、「年のせいかな?」「疲れているのかな?」と自分を納得させて、受診を躊躇するケースは少なくありません。また日や相手によって症状の出現に波があるため、家族も「なんとなくいつもと違うな…」と違和感を抱きつつ受診を先送りする場合があります。その結果、認知症の症状がそのまま進行すると、記憶は近い時期から徐々になくなっていきます。そして徘徊、失禁、性格の変化などが現われ、最終的には日常生活全般において介護が必要な状態となります。

早期発見することの大切さ

アルツハイマー型認知症の根本的な治療方法は確立されていないため、治療内容は症状の進行を抑える対症療法となります。認知症の兆候にいち早く気づき初期の段階で治療を開始すれば、症状が軽いうちに進行が緩やかになります。

認知症の初期症状として最も多いのは、記憶障害です。しかし、高齢になると誰でも記憶力が衰えてくるため、認知症の兆候が見られても本人や家族が気づけないケースは少なくありません。そして「何かおかしい」と気づいた時にはすでに認知症が進行しており、周りのサポートなしでは生活できない場合もあります。本人がより長く自分らしく自立して生活するため、そして介護の開始をなるべく遅らせるためにも、認知症は早期発見することが大切です。

初期に見られる症状

以下は、初期に見られる症状の代表例です。ただし、症状の現れ方や程度は人によってそれぞれ異なります。

  • 最近の出来事が覚えられない
  • 同じことを何度も尋ねる
  • 適切な言葉がとっさに出てこない
  • 物や親しい人の名前を思い出せない
  • 日付が不確かになる
  • 身だしなみに無頓着になる
  • 大切なものをなくす、置き忘れる
  • 調理の手順が分からなくなる、時間がかかる
  • 性格が変化する(穏やかだった人が怒りっぽくなる、以前は活動的だったのに覇気がなくなるなど)
  • 慣れた道に迷う、どこへ行こうとしていたのか分からなくなる

受診のサインを逃さないようにしよう

最近なんとなく変だなと感じていても、「認知症と診断されたらどうしよう…」という不安から受診を躊躇してしまうのは誰にでもあることと思います。しかし、アルツハイマー型認知症は進行性の病気ですので、できるだけ早く受診することが肝心です。治療の目的は、残っている能力や機能を十分に引き出し、自立した生活を長く続けることです。本人ができることを自分で行うことは、自信にもつながります。

まずはかかりつけの医師にかかり、最近の気になる症状について相談しましょう。もしかかりつけの医師がいなければ、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談します。地域包括支援センターとは、高齢者の生活全般に関わる地域の総合相談窓口です。本人だけでなく、家族でも相談できます。地域包括支援センターの電話番号や場所が分からない場合は、役所に電話する、ホームページで確認するなどして調べましょう。


アルツハイマー型認知症の初期症状や受診のサインを知っておくと、いざ兆候が表れた際にすぐに気づき行動に移せます。「おかしいな?」と思ったらなるべく早く受診しましょう。そうすることで症状が軽いうちに認知症の進行を抑えられ、本人はより長い時間自立して生活できますし、家族への負担もその分少なくなります。