認知症を予防するためにできる3つのこと

脳腫瘍や慢性硬膜下血腫など特定の病気が原因のケースを除き、一度発症すると完治が難しい認知症。現在、高齢化の進む日本において、認知症患者の数は増加の一途をたどっています。しかし、認知症は日々の生活を見直すことが予防へとつながることをご存知でしょうか。今日から取り組める、認知症予防に効果的な3つのポイントを解説します。

目次

認知症と生活習慣の深い関係

認知症を完璧に予防する方法は、残念ながらまだ確立されていません。しかし、最近の研究から、認知症は生活習慣病と深い関係にあり、生活習慣を改善することで認知症の発症を抑制する効果があることが分かってきました。

厚生労働省は、生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」であると定義しています。具体例には高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病などがあり、認知症全体の60%以上を占めるアルツハイマー型認知症の発症には、この生活習慣の問題が危険因子であることが指摘されています。またアルツハイマー型認知症に次いで多い脳血管性認知症も、高血圧や脂質異常症が原因で動脈硬化が起こり、その結果脳梗塞や脳出血を発症して認知症に至るケースが少なくありません。

このことから、生活習慣の改善は、生活習慣病の予防のみならず認知症の予防にも効果的です。食生活、運動、社会活動への参加の3つに焦点を当て、それぞれの対策を見ていきましょう。

ポイント1. 食生活を見直す

食事は、身体をつくる基盤となる大切な習慣です。規則正しい時間に1日3食、バランスの良いメニューと適切なエネルギー量を心がけましょう。特に糖質・塩分・脂質は摂りすぎないよう注意が必要です。以下のポイントを意識しながら、和食を中心とした献立を考えるといいでしょう。

①野菜、果物、豆類を積極的に食べる

野菜や果物に含まれているビタミンB群、C、E、βカロチンを摂取することで、動脈硬化やアルツハイマーの原因物質の増加を抑制します。また納豆や豆腐といった大豆製品は、血中コレステロールや中性脂肪を低下させる働きがあります。ただし、果物は果糖が含まれているので、適切な量を守って食べるようにしましょう。

おすすめの食材例
ビタミンB群…豚肉、豆類、レバー、うなぎ、卵、乳製品、葉菜類、魚介類、穀物の胚芽など
ビタミンC…みかん、いちご、ブロッコリー、ほうれん草、ピーマン、芋類など
ビタミンE…ナッツ類、胚芽油、うなぎなど
βカロチン…にんじん、ほうれん草、ピーマン、かぼちゃ、かんきつ類、スイカなど

②魚を積極的に食べる

脳の活性化が期待されるDHAやEPAを積極的に摂取します。特にサバ・イワシ・サンマなどの青魚に多く含まれます。

③緑茶や赤ワインを適量飲む

抗酸化作用や抗炎症作用のあるポリフェノールを摂取します。

ポイント2. 適度な運動をする

運動は、生活習慣病の危険因子を取り除き、脳の状態を良好に保つ効果があります。日々の生活に運動や身体運動を積極的に取り入れ、活動的に過ごしましょう。運動は激しいものである必要はありません。それよりも、毎日継続して行うことが大切です。週3回以上、1回あたり30分以上を目安に行いましょう。

中でもウォーキングは、身体への負担が少なく継続しやすい有酸素運動としておすすめです。朝の散歩を習慣にする、車通勤の代わりに駅まで歩く、駅や職場で階段を使うなど、無理のない範囲で取り組みましょう。

ポイント3. 社会活動に参加する

高齢になると、家から出るのが億劫になる方が多いかもしれません。しかし、外に出て社会活動に参加することは、身なりを整える、持ち物を準備する、集合時間に間に合うように逆算して家を出るといった段取りを考えるなど、脳にさまざまな刺激を与えます。認知症になると、このように順序だてて行動することが難しくなるため、何気ない外出であっても積極的に参加しましょう。趣味を楽しむ、サロンやデイサービスで周りの人と会話する、ボランティアに参加するなど、できることはたくさんあります。趣味を持ち、人と関わり、社会の中で役割を持つことは、認知症の予防につながる大切な取り組みです。

社会活動の例

  • 図書館へ行き読書を楽しむ、博物館や映画館へ出かける
  • 料理教室に参加する
  • 週1回デイサービスに通う
  • サロンでほかの人たちと会話を楽しむ、ゲームを楽しむ
  • 町の清掃活動に参加する
  • 俳句や短歌など創作活動を楽しむ
  • シルバー人材センターに登録し、今までの仕事や特技を活かして社会貢献を行う

認知症を予防するための3つのカギは、食事・運動・社会活動です。どれも始めるのは難しくないものの、これまで続けてきた生活習慣を全てがらりと変えることは容易ではありません。ストレスにならない範囲で、できるものから徐々に取り入れ、健全な生活習慣と認知症の予防を実現しましょう。