認知症は治療できる?治療とケアの方法を知ろう

認知症は、発症してもその後の対応次第で症状の進行を遅らせる、または緩和する場合があります。そのためには、治療と正しいケアの方法を知ることが大切です。本人がなるべく長く快適に過ごせ、同時に家族の介護負担を軽くするためにできることを一緒に考えてみましょう。

目次

認知症は治療できるの?

認知症の発症には、さまざまな原因があります。認知症の原因となる病気が判明しており、治療によってその原因を取り除けるケースでは、認知症の解消もしくは改善が可能です。具体的には、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫など手術で治療する場合や、薬の副作用によるものがこれに該当します。

一方、上記に当てはまらない大半の認知症では、完治させる方法はまだ確立されていません。しかし、完治しなくとも治療を受けることで症状の進行を遅らせ、日常生活の支障となる症状が軽減する可能性が高まります。また症状が抑制された場合、本人は発症後も穏やかな生活を長く送ることができ、介護する側の負担軽減にもつながります。そのため、認知症の兆候が見られた際には、なるべく早く適切な治療を受けることが大切です。

治療法その1.「薬物療法」

認知症の治療の1つとして、薬物療法があります。抗認知症薬は、神経伝達物質が分解されるのを抑えてスムーズな情報伝達を助ける「抗コリンエステラーゼ阻害薬」と、情報伝達を整える「NMDA受容体拮抗薬」の2つに分類されます。また認知症の行動や心理症状に対して薬物療法が必要だと医師が診断した場合、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠薬などが使われる場合もあります。

これらの薬物療法は、継続して服用することが大切です。例え症状が改善しても自分の判断で中断せず、必ず医師や薬剤師の指示に従って正しく服用しましょう。

治療法その2.「非薬物療法」

薬物治療と共に認知症の治療効果を高めるためのアプローチとして、薬物を用いない非薬物療法も並行して行われます。適度な運動で残された機能を維持しつつ、脳へ刺激を与えて活性化させ、さらに心を満足させる体験を通して「その人らしい生活」が送れるよう支援することが目的です。

・リハビリテーション

運動、作業、活動を通し、日常生活上の能力の機能訓練や精神的な安定を図ります。例えば、歩く・寝返る・階段の昇り降りなど平衡感覚や筋肉を強化する運動、料理や掃除など日常生活で使う手や指先の細やかな運動、認知機能の改善を目指す認知リハビリテーション、季節や日付を認識するリアリティ・オリエンテーションなどがあります。

・心理療法

対話などの心理的なアプローチを通して、患者の認知・行動・感情・身体感覚を改善しようという治療法です。代表的なものとして、過去の楽しかった記憶を引き出し心の安定を図る回想法などがあります。

・その他の治療法

音楽によるリラックス効果で症状改善を目指す音楽療法、絵画や折り紙などを通し脳の活性化を図る芸術療法、さらに園芸療法、アニマルセラピー、アロマセラピーなどがあります。

家族によるケアの大切さ

認知症において、治療と同様に重要な役割を果たしているのが、家族による適切なケアです。家族との関係は認知症患者の生活の基盤ですから、家族からのサポートが得られるかどうかは症状にも大きな影響を及ぼします。

家族が認知症を発症すると、これまでとは異なる言動や行動に多くの人が戸惑います。しかし、認知症の症状の進行を抑えるには、本人の心の安定が重要です。まずは家族が認知症を理解し、本人との信頼関係を築くことを目指しましょう。同時に、家族が介護で心身ともに疲れ切ってしまう状況を避けるため、介護の専門職によるデイサービスやデイケア、ショートステイなど、介護保険や地域の支援制度を積極的に活用することも大切です。


認知症になる前に適切な治療を受けることで症状を緩和する可能性が高まります。そのため本人や家族が「認知症かもしれない」と感じたら、症状が軽いうちになるべく早く専門機関へ受診しましょう。また家族による認知症患者への適切なケアも、認知症の治療には欠かせません。本人の気持ちに寄り添い、心身のサポートを心がけましょう。