「認知症疾患医療センター」の役割と利用方法

社会高齢化に伴い、認知症患者は増加の一途をたどっています。そんな中、政府は「認知症患者とその家族が、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会」を目指し、認知症の情報拠点となる「認知症疾患医療センター」を設置しています。認知症疾患医療センターの役割、そして利用方法について解説します。

目次

認知症疾患医療センターとは?

認知症疾患医療センターとは、認知症の医療相談や診察に応じる専門の医療機関です。都道府県知事または政令指定都市市長が指定する病院に設置され、もの忘れ相談から、認知症の診断、治療、介護保険申請の相談まで、認知症に関する支援を包括的に提供します。

認知症疾患医療センター最大の特徴は、地域のかかりつけ医、介護・福祉施設、地域包括支援センターなどと連携し、地域医療と介護が一体になって認知症患者とその家族を支援する点にあります。認知症疾患医療センターとして認定されるためには、人員配置や入院体制など一定の条件を満たすことが必要です。

認知症疾患医療センターの仕組み

認知症疾患医療センターは、厚生労働省の基準に基づき以下3つのタイプに分類されます。

  1. 基幹型

    主に病院に設置されます。検査機器や入院設備が整っており、徘徊や抑うつといった周辺症状やほかの疾病との合併症にも対応できる施設です。

  2. 地域型

    3つのタイプの中で最も多く、精神病院などに設置されます。基幹型と同様の人員を配しています。検査機器や入院体制については、必要に応じてほかの医療機関と連携しながら対応します。

  3. 連携型(診療型)

    地域の診療所やクリニックに設置されます。認知症急性期への対応が可能な医療機関と連絡体制を取りながら、対応します。

    認知症疾患医療センターには、専門医、臨床心理技術者、精神保健福祉士、保健師、看護師などのスタッフが配置されています。そしてほかの病院と連携しながら、CTやMRIなどの検査体制や入院治療が行える体制を整え、対応することになります。

認知症疾患医療センターの役割

次に、認知症疾患医療センターの役割についてひとつずつ見ていきましょう。

  1. 専門医療相談

    認知症患者本人やその家族、介護事業所などの関係機関より、認知症に関わる相談を受け付けます。精神保健福祉士など専門スタッフが対応します。

  2. 鑑別診断と初期対応

    専門医による診察や検査によって、認知症の詳しい診断を行います。またその結果に基づき、今後の治療方針を検討し、初期の対応を行います。

  3. 周辺症状・合併症への対応

    徘徊・抑うつ・妄想といった周辺症状や身体の合併症が見られる患者の治療や入院受け入れを行います。入院体制がない場合は、連携して入院体制の整った医療機関にて対応します。

  4. 地域の関係機関との連携

    自治体、医療機関、認知症サポート医、地域包括支援センター、福祉事務所、保健所など地域の関係機関との連携および調整役を担います。介護や生活支援のサービスを必要とする家族には、必要に応じて紹介も行います。

  5. 連携協議会・研修会の開催

    認知症患者の医療・介護連携協議会や、医療事業者向けの研修会を行い、地域における連携体制を強化します。

  6. 情報の発信

    認知症に関する情報を提供します。

認知症疾患医療センターの探し方と受診方法

認知症疾患医療センターを探すには、本人がお住まいの都道府県のサイトをチェックしましょう。認知症疾患医療センターの案内のページに、その地域にある認知症疾患医療センターの情報一覧が掲載されています。また認知症疾患医療センターと連携している「地域包括支援センター」へ問い合わせる方法もあります。

認知症疾患医療センターを受診するには、多くの場合かかりつけの医療機関からの紹介状が必要です。事前予約が必要なケースも多いため、詳しくはお近くの認知症疾患医療センターやかかりつけ医、地域包括支援センターへ相談してみましょう。


認知症疾患医療センターは、認知症患者やその家族を支援するために設置された、認知症専門のサポート機関です。認知症となった後も自分らしく安心して過ごせるよう、認知症の兆候が見られた場合はなるべく早くかかりつけ医に相談することをおすすめします。