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基礎知識

ドル建て保険ってどんなもの?
円建てと比較したメリットとデメリットを解説

超低金利時代が続く昨今、貯蓄性の高いドル建て保険に注目が集まっています。

ドル建て保険とは外貨建て保険の一種で、従来の円建て保険とは特徴や仕組みが大きく異なります。ドル建て保険への加入を検討する際は、内容や特徴を理解するのはもちろん、円建て保険と比較して検討することが大切です。

この記事では、ドル建て保険の基礎知識や、円建て保険と比較した場合のメリット・デメリット、ドル建て保険の活用法などについて解説します。

目次

ドル建て保険とは

ドル建て保険とは、保険料の支払いから保険金・年金・解約返戻金の受け取りまで、すべてドルで行う外貨建て保険の一種です。

毎月一定の保険料を支払い、死亡時や満期時、中途解約時などにあらかじめ定められた保険金や年金、解約返戻金を受け取るところは円建て保険と共通していますが、支払う保険料と受け取る金額が為替相場の影響を受けるところが大きな違いです。

円よりも金利が高いドルで運用するため、保険でありながら貯蓄性も高いところが大きな特徴です。

ドル建て保険は以前から存在していましたが、日本で注目されるようになったのは、2016年に日銀によって「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利政策)」が導入されたのがきっかけです。

マイナス金利政策の導入に伴い、金融機関が個人の預金口座の金利引き下げなどを行ったため、日本は超低金利時代に突入することになりました。

金利の低さから日本の金融機関に資産を預けてもほとんど収益を期待できませんが、ドルなら日本よりも金利が高く、同じ資産を預けるにしても貯蓄性が高くなるのです。ただし、後述する為替手数料や為替相場の影響には注意する必要があります。

ドル建て保険のメリットとデメリット

円建て保険と比べた場合の、ドル建て保険のメリットとデメリットは次のとおりです。

ドル建て保険のメリットとデメリット

それぞれ以下で詳しく説明します。

ドル建て保険のメリット

ドル建て保険の一番のメリットは、円建て保険に比べて保険料が安いことです。

契約者が毎月支払う保険料はさまざまな要素を考慮して決定していますが、そのうちのひとつが「予定利率」です。

予定利率とは保険会社が契約者から受け取った保険料を運用する際に約束する利回りのことで、利率が高いほど大きな運用収益を見込めることから、保険料は安く設定されます。この予定利率が、円建て保険に比べてドル建て保険の方が高いのです。

ドル建て保険の予定利率が円建てに比べて高い理由は、アメリカの国債利回りが日本より高いから。保険は主に国債で運用されるため、国債の利回りの差が、予定利率の差に影響を与えるのです。

ドル建て保険は円建て保険よりも予定利率が高いため、同じ保障内容であればドル建て保険の方が保険料を抑えて加入することができます。

また、ドル建て保険は為替相場の影響を受けますので、保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取る際に円安だった場合、為替差益を得ることができます。ただし円高だった場合は、為替差損を被り、場合によっては支払保険料総額を下回る元本割れを起こす可能性もあります。

ドル建て保険のデメリット

ドル建て保険のデメリットのイメージ

保険料が安いことや為替差益を得られるかもしれないといったメリットがあるドル建て保険ですが、その一方でいくつかのデメリットもあります。

まず1つ目は、円からドルへ、ドルから円へ両替する際、必ず為替手数料が発生することです。保険料を支払うときや、保険金や年金を受け取るときは、それぞれ為替手数料を負担する必要があります

為替手数料は、金融機関が外貨の種類ごとに「1ドルにつき◯円」と決めているため、支払う保険料や受け取る保険金が多いほど、手数料の負担も大きくなります。

また、ドル建て保険の保険金は為替相場の影響を受けるため、相場が大きく変動した場合は損失が出る可能性があります。

具体的には、保険料を支払ったときよりも、保険金や解約返戻金を受け取ったときの相場が円高になっていた場合、元本割れを引き起こすおそれがあるので要注意です。

また、毎月支払う保険料が一定ではないこともデメリットとして挙げられます。為替相場は変動するため、先月の保険料は1万円だったけれど、今月は1万2,000円になるなど、円で支払う毎月の保険料も変動します。円安になれば保険料も上がるため、想定の保険料よりも高くなった月は家計への負担となる可能性があります。ただし、一時払いや前納などができれば、このデメリットはなくなります。

ドル建て保険はどんな人に向いている?

ドル建て保険の加入が向いている方の特徴を2つのポイントに分けて解説します。

1. 相続税対策に生命保険を活用したい人

日本では、財産を相続した方に対して相続税が課せられます。

相続税率は8つの区分に分かれており、法定相続分に応じた取得金額に対して10〜55%の税金がかかります。[注1]

被相続人が亡くなったことによって支払われる死亡保険金などの「みなし相続財産」も課税対象になりますが、一定の死亡保険金が非課税とされています。相続人が死亡保険金を受け取る場合に限りますが、「500万円×法定相続人の数」が非課税となるのです。[注2]

たとえば、妻と2人の子どもがいる被相続人(夫)に3,000万円の死亡保険金が掛けられていた場合、3,000万円の保険金のうち、500万円×3人(妻・子2人)=1,500万円は非課税となります。

現預金で持っていると、その金額分相続税がかかりますので、同じ3,000万円でも、生命保険に加入して死亡保険金として遺族に受け取らせる方が、相続税を節約できます

ドル建て保険であれば、同じ保険料でも円建て保険よりも死亡保険金を増やせる可能性があるため、できるだけたくさん遺産を遺したい方には検討の余地があるでしょう。ただし為替相場の影響があることには注意が必要です。その点では、その影響を受けなくて済むアメリカに住んでいる遺族などに死亡保険金を遺したい方が、もっとも向いていると言えます。

[注1]国税庁「相続税の税率」
[注2]国税庁「財産を相続したとき」

2. 遺せるお金が一定量あり、さらにリターンを狙いたい人

ドル建て保険は、万一の時のための保障を確保しつつ、円建て保険よりも安い保険料で大きな死亡保険金や解約返戻金を得ることができる商品です。

円建て保険にも貯蓄型の商品はありますが、総じて金利が低いことを考えると、ドル建て保険に加入した方が同じ保険料でも大きなリターンを見込めるでしょう。

ただし、先述のとおり、為替相場の影響を受ける分、相場の値動き次第では損失を被り、場合によっては元本割れすることもあるので注意が必要です。

そのため、ドル建て保険は、一定の現金を確保しており・余剰分でさらに運用をしたい・ついでに万が一の備えもしておきたいという方におすすめです。

ドル建て保険の活用法

ドル建て保険の活用法のイメージ

ドル建て保険は、万一の時の保障を確保する手段でありながら、同時に資産形成の側面も持つ商品です。

万一の時の保障を確保したいだけなら円建て保険で十分ですが、子どもの教育資金や老後資金づくりを行いたいという方は、円建て保険よりも高い解約返戻金や年金などを見込めるドル建て保険の活用もひとつの選択肢でしょう。

その反面、解約返戻金や年金などを受け取るときの為替相場によっては、元本割れしてしまうリスクがあることも忘れてはいけません。

また、ドル建て保険は契約後早いうちに中途解約すると、為替手数料が発生する分、円建て保険に比べて、損失が大きくなる可能性があります。資産形成としてドル建て保険の活用を考えているのであれば、目的としている受取時期までは解約しないで続けられるかを考えて、加入を検討しましょう。

まとめ

ドル建て保険は、円よりも金利が高いドルで運用するため、円建て保険よりも大きなリターンを期待できますが、一方で運用には為替手数料がかかる上、為替相場の値動きによっては損失が出て元本割れを起こすリスクがあります。

ドル建て保険は万一に備えるための保険であることに変わりはありませんが、円建て保険に比べると投資の側面が強い商品なので、余剰資金を保険料にまわすことをおすすめします。

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